ベッドから起きあがるのが辛い。
風邪かと思ったが、気合いを入れて起きてみるとなんともない。
一人ぼっちで食べる2回目の朝飯は、1時間ほどかけてゆっくり食べた。
食べながら地図を眺め、1カ月以内にローマまで
行かなくてはならない重圧を強く感じ、気分が重くなった。
電車に自転車ごと乗せていけるというのは本当だろうか。
乗れなかったらどうしよう。
学校の支援があってやっとここまできたわけで、
無様な姿を晒して「失敗しましたー」というわけにもいかない。
部屋に戻りベッドの上に座ると、そのまま動けなくなった。
ヨーロッパまで大金をかけて何をしにきたのだろう、
考え始めると混乱してきて、どうにも情けない気分になった。
なんとかベッドから降り、わざと迷ってオランダの土地を体感した。
やはり自転車大国と言われるだけある。
タンデム(2人乗り)や、
リアカーをつけ子供を乗せている親子も普通に通り過ぎていく。
市民の生活に違和感なく自転車がとけ込んでいるのが羨ましい。
だいぶ走り、去年タイを旅したときに
よく世話になっていたのとそっくりな、
ゴチャゴチャした汚い市場をうろつく。
多くの店はインドやタイ、それと中東風な親父が経営していた。
意外に多国籍な国だ。
気分は重かったが、明日には
アムステルダムを出発したいので、本屋を探して走り回る。
1時間ほど走り続け、オランダとドイツの地図を購入した。
どちらも全く読めないが、オランダの方は
表紙に自転車の写真が載っているので期待がもてる。
地図に引いてある緑色の線が、自転車用の道なんじゃなかろうか、
なんて自分勝手な期待を膨らませる。
その後、どうしても誰かと話がしたくなってネカフェへ行く。
メールをあちこちに送り、
やっと実宅のPCがログインしてきたのは制限時間終了3分前。
たったの3日ぶりに聞いた親の声を
これほどうれしいと感じたことはない。
既に夕方だったがまた動きだし、“アンネの隠れ家”へ行った。
そこには当時のままの隠し扉や、
彼女が書き記していた日記が展示してあり、より一層気分を重くさせた。
アンネの家を出てYHに帰ろうとすると、
遠くの方が人であふれており、川は船であふれていた。
近づいていくと、川の上に作られたステージで
クラシックのコンサートが開かれていた。
知っている曲もいくつかあり、観客たちはそれぞれ
家からワインを持ってきて、家族で楽しんでいるようだった。
1時間ほど聞き入ってしまい、9時を過ぎて
そろそろ日没を迎えそうだったのでYHに戻った。
日没が日本よりずっと遅いので、一日を多く楽しめる。
今日も夕飯の調達に失敗した。
だから、早く寝ようと思う。
でも、宿の外が騒がしい。
公園でバスケットボールをしている
子供たちの笑い声がやたらと耳につく。
家族が、恋人が、ノンビリした、暑くて退屈で平和な日々が恋しい。
日本に帰りたい。
走行距離
73.06Km
合計走行距離
112.4Km
平均時速
18.8Km/h
最高時速
59.1Km/h